FIFA女子ワールドカップのテレビ放送がやっと決まった

7月20日に開幕するFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023。日本は昨年行われたアジアカップで出場権を獲得していたものの、国内でのテレビ放送の予定はずっと決まらないままでした。

大会開催を心待ちにしていた私は、テレビ放送の予定が決まらないことに5月まではやきもきしていたのですが、6月に入ってからは「使い勝手は悪いけど、FIFA+(FIFAのストリーミングサービス)で見れるからいいか」と諦めモードに突入していました。

昨日、開幕まであと1週間というタイミングでNHKでの放送決定が発表されたというニュースを目にした時には、嬉しさや驚きとともに、もっと早く決まっていれば広報の機会もたくさんあったのに、と悔しさも感じました。

今月5日にFIFAが発表した世界各地の放映権リストによれば、出場国32か国のうち国内のテレビ放送が決まっていなかったのは、日本、フィリピン、ハイチのみ。日本はこれまで8大会に出場し、前回大会ではベスト16と振るわなかったものの、2011年大会で優勝、2015年大会で準優勝と優れた成績を残しています。日本は強豪と言える国(FIFAランク11位)であり、当初は2023年大会の開催国として立候補していたにもかかわらず、どのテレビ局も放映権を取得していない状態に、日本では女子サッカーがいかに人気がないかという事実を突きつけられた気持ちでした。

今回日本でテレビ放送がなかなか決まらなかったのは、放映権の販売方法が変わったことの影響が大きいのではないかと思います。前回大会まで女子ワールドカップの放映権は男子ワールドカップとセットで販売されていましたが、今回からその方法をやめて、女子ワールドカップだけで販売されるようになったのです。そして日本では「女子は視聴率が取れない」という理由で、投資に見合ったリターンが得られないと判断されてどのテレビ局も放映権を購入していなかったのでしょう。

欧州ではここ数年、女子サッカーの人気がかなり高まってきています。今年ウェンブリーで行われたFAカップ決勝には7万7000人以上の観客が来場するなど、日本とは比べものにならないほどの動員数を記録しています。また、アメリカ(FIFAランク1位)やカナダ(FIFAランク7位)は最近の国際大会で上位の成績を残していますし、サッカーといえば女子スポーツというイメージが強い地域でもあります。

こうした状況や、アメリカ、オーストラリア、カナダといった国々で選手たちが男女同一報酬を求めて行動を起こし世界的なニュースになるという流れを受けて、FIFAは大会の賞金総額を前回よりも引き上げ(それでもカタールワールドカップのおよそ4分の1)、これまで女子には行われていなかった出場選手個人への賞金割り当てを行うことにするなど、待遇の改善に向けて取り組んでいます。そのため放映権も決して安くない金額であったでしょう(公表されていませんが、100億円程度という噂があるようです)。

このようなジェンダー平等に向けた取り組みの話になると、主に男性によって「ジェンダー平等が実現したら理想的だが、現実問題、女子サッカーは儲からない。賃金を同一にしろと言うなら、男子と同等に儲かるようになってからにすべきだ」という話に舵が切られます。そして、「女子は男子に比べてスピードやインテンシティに劣る」から「つまらない」ので女子サッカーは人気がなく「女子サッカーは男子サッカーより小さいピッチでやればいいんじゃないか」といった話になったりするんですよね。

少し話が横道にそれましたが、「視聴率が取れない、人気がない」というのは、視聴率を取るため・人気を向上させるために十分なプロモーションを行うの努力が足りていないことも大きく影響しているはずです。今回もNHKがもっと早い段階で放映権を獲得していたら、開幕に向けてさまざまな特番を組むなどして視聴者に興味を持ってもらうための取り組みができたはずです。それを思うと、開幕1週間前にテレビ放送決定というのは、あまりにも遅く、ワールドカップ女子サッカー全般の人気を高める機会をどれだけ逃してしまったのだろうと、悔しく感じます。

もちろんテレビ放送が決まったことはとても嬉しいです。BSメインでの放送になるとのこと、BSの受信料も払い続けている甲斐がありました。

女子サッカージェンダー平等は長年関心を持っているトピックなので、今後また改めて詳しく書きたいと思います。

まずは来週からのワールドカップを楽しみます。