Thinxを1年使ってみた感想

先日、Thinxから「初めての購入から1年経過したよ!」という、次回購入時に$10オフになるプロモコードのついたメールが届いていた。

www.shethinx.com 

Thinxというのは生理用の下着ブランド。クロッチ部分に経血を吸収する素材を使っているので、使い捨てのナプキンやタンポンを使う必要がなく、下着を履くだけでOKというもの。数年前からこのタイプの下着が流行っていて、その中でもThinxは代表的なブランドというイメージがある。


Thinxは種類が豊富で、デザインの好みや出血量に合わせて選べるようになっている。「女性向け」ではなく、「生理のある人向け」と言っているのも好感が持てる。ボクサーブリーフのようなデザインもあるから、たとえばトランス男性で生理のある人でも使いやすそう。タンポン4本分の経血を吸収できるとか、サラッとして快適とか、良さそうな謳い文句だけど本当のところはどうなんだろう、というのが気になって買ってみたのだった。

思っていたよりぶ厚い

選んだのはオーガニックコットンを使っているSuper Cotton Briefというモデル。オーガニックコットンのシリーズの中で一番吸収量が多いものだ。とりあえず試すためなので2枚買ってみた。サイト上の写真ではわからなかったけれど、実際に届いた製品はかなり厚手だった。というか、こんなにぶ厚い下着は見たことがなく、ちょっと驚いた。ぴったりした服は着られない。まあ、吸収量が多いから仕方ないのかも。

最初に使ってみた感想

Thinxが届いたのは生理期間中ではなかったので、まずは1回洗濯しておいて次の生理が来たら試すことにした。厚手のパンツは履いてみるとあったかい。本当にナプキン付けなくても大丈夫なのかな?と思いながら過ごしてみた。出血してもサラッとしてる、すごい!と思ったのは最初のうちだけで、少し経つと、トイレに行って用を足した後パンツを上げるたびに一瞬、濡れていてヒヤッとする。この、濡れた布がぺとっと肌に着く感覚が苦手な人は結構いると思う。使ったことないけど布ナプキンもこんな感じなんだろうか。

生理期間中ずっとThinxだけで過ごすのは難しい

多い日に試したところ、2時間ほどでクロッチの脇の縫い目から経血が漏れてしまった。吸収部分の全体ではタンポン4本分の経血を吸収するのかもしれないけど、経血が直接当たるのはごく一部だから、限界が来るのはタンポン4本を使うよりもずっと早い。家にいたらすぐに履き替えられるけど、外出していたら履き替えは難しい(脱いだ後のThinxを持ち歩くのも嫌)。私の場合は出血量の多い日にThinxだけで過ごすのは無理だとわかった。それ以来、量の少ない日だけ使っているけど、それなら別に多い日用の厚手のタイプじゃなくてもよかったかも。

洗うのはわりと面倒

Thinxのサイトには「洗濯機のデリケートモードで洗うか手洗いした後で部屋干しすること、乾燥機とアイロンは使用不可」と書いてある。さらにFAQには他の洗濯物と一緒に洗うことは衛生上問題ないとも書いてある。それでもさすがにそのまま洗濯機で他のものと一緒に洗うのは心理的に抵抗があるので、冷水で手洗いして経血を落とした後に洗濯機で洗っている。洗ったら部屋干し。カナダは湿度が低いから洗濯物がすぐ乾くので特に問題はないけど、湿度の高い日本では乾くのに時間がかかるような気がする。やっぱり便利さでは使い捨ての生理用品の方が上だ。

良い面もある

と、ここまでデメリットについて書いてきたけれど、量が少ない日に使う分にはとても快適だ。私は量の多い日と少ない日の差が激しいので(他の人と比べたことがないからそれが当たり前なのかもしれないけど)、量が多い日は使い捨ての生理用品を使い、少ない日は生理用パンツのみで過ごしている。そのため、使い捨ての生理用品を使う量(つまりゴミ)が少し減った。生理用品を買い置きし忘れてしまったタイミングで生理が来てもとりあえず対応できるので慌てる必要がなくなった。そして、量が少ない日なら吸収部分が濡れてしまうほど出血することがないので、着用時の不快感もないし、日中に下着を履き替える必要もないので、普通の日とほぼ変わらない生活ができる。

競合製品の方が気に入った

Thinxを購入した後で、Knixという競合の製品も購入して使っている。

knix.com

Knix(名前も寄せている感じがある)の製品はThinxと比べるとすごく薄くて、逆にこんなに薄くて大丈夫なのか気になるほど。吸収部分も小さい。着用感は普段使いのシームレスの下着とほぼ同じ。薄いので、生理中にランニングするときには特に重宝している。ランニング用のタイツの下に履いていてもラインがひびかないし、少ない日はKnixのみで問題ない。今は多い日に走ることはないけど、マラソンのトレーニングが多い日に重なってしまった場合はタンポンとKnixを併用していた。

結論:現状では使い捨ての生理用品の勝ち

生理の経血量には個人差があるし、履き心地や質感などの好みもあるので一概には言えないけど、Thinxは量の多い日に単体で使えないので、私は現時点では使い捨ての生理用品の方がいい。どうしても生理用品のゴミを減らさないと嫌だという人にはおすすめするけど、そうでない場合は試したければもう少し製品が改良されてからにした方がいいと思う。

 

余談

Thinxでは数年前に創業者がセクハラでCEOの座を退くという問題もありました。詳細は下のリンクに詳しく書かれています。

www.thecut.com

「非白人」を指す Racialized person という言葉について

早いもので、6月も間もなく終わります。今月はニュースでBlack Lives Matter(BLM)について取り上げられない日はなかったと言っていいほどでした。

カナダのニュースではアメリカの様子が頻繁に伝えられていますが、ここバンクーバーでも抗議活動が何度も行われ、黒人に対する人種差別や社会そのものに組み込まれている体系的な人種差別そのもに対する反対を表明する人たちが数千人規模で集まったイベントもありました。

バンクーバーでもBLMの抗議やそれにまつわる話題が増えている中、BC州やバンクーバーにおける黒人の歴史について調べてみたところ、自分にとって新しい発見がいくつかあったので、そのうちブログにまとめておきたいと思っています。今日は、SNSで人種差別に関する話題が増えている中で、自分が以前から気になっていた英語表現について書いておこうと思います。

英語で「非白人」を意味する表現として、古くは "Colored" という言葉が使われていました。それ以外にも、"non-White"、 "racial minority"、"visible minority"、"person/people of color"、"person of color" を略した "POC"、"Black, Indigenous, person of color" を略した "BIPOC" といった表現があります。そして最近よく聞く表現として "racialized person" というものがあります。

「非白人」を指して "racialized" という言葉が使われていることを私が初めてはっきり意識したのは昨年の女子ワールドカップ期間中でした。私が好きなBurn It All Downというポッドキャストで、植民地主義と人種にからめてサッカー女子ワールドカップについて取り上げた回*1があり、そこで「ノックアウトステージに残っていたチームで唯一 "Racialized" なチームは日本だけ」という発言があったのです。*2

www.burnitalldownpod.com

このポッドキャストについて簡単に説明すると、5人の女性スポーツジャーナリストや研究者が運営しているフェミニズム的視点からスポーツについて語るポッドキャストです。もちろん女子競技の話題が多いのですが、女性アスリートが直面する問題や人種差別問題、アスリートによる暴行事件などスポーツとフェミニズムを中心に幅広い範囲で取り扱っています。フェミニズムについて発信している人の中でスポーツ観戦が好きな人は少ないかもしれません。だからこそプロスポーツリーグの運営やスポンサーシップ、広告などのアスリートを取り巻く環境についてフェミニズム的視点から語られている数少ない貴重なメディアであると思います。

番組内で日本が唯一 "Racialized" なチームだと発言している Shireen Ahmed はトロント在住のイラン系カナダ人で、フリーランスライターでありアクティビスト。サッカーが大好きで、いつも「私の首相は Christine Sinclair*3」と言っていて、澤穂希を "Her Royal Greatness Homare Sawa" と呼ぶなでしこファンでもあります。

こうした背景から、"Racialized" という言葉がこのポッドキャストでは悪い意味ではなく、非常に考えられて使われた言葉だということが分かると思います。


カナダでは、"Racialized person" という表現は、2014年にオンタリオ人権委員会が白人ではない人を表す言葉として使用すると公式に発表したことが幅広く使われるきっかけになったように思われます。(もっと早くから使用されているケースもありますが、例えばカナダの全国紙 Globe and Mail では2010年代後半から使用例が増えています。)

オンタリオ人権委員会は "Racialized person" を使うことを選択した背景を次のように説明しています。

The Commission has explained “race” as socially constructed differences among people based on characteristics such as accent or manner of speech, name, clothing, diet, beliefs and practices, leisure preferences, places of origin and so forth. The process of social construction of race is called racialization: “the process by which societies construct races as real, different and unequal in ways that matter to economic, political and social life.”

Recognizing that race is a social construct, the Commission describes people as “racialized person” or “racialized group” instead of the more outdated and inaccurate terms “racial minority”. “visible minority”, “person of colour” or “non-White”.

 

(以下、簡単な訳です)

オンタリオ人権委員会では 「人種」というものは、アクセントや話し方、名前、服装、食習慣、信念、慣行、余暇の過ごし方の好み、出生地などを基にして人と人との間に社会的に構成された差異であると説明している。人種を社会的に構成するプロセスを「人種化」と言う。それは、「社会が複数の人種を、経済的、政治的、社会生活的に大きな違いのある本物の差異であり、不平等なものであると構成するプロセスである。」

人種が社会的な構成概念であることを認識し、人権委員会では、"racial minority”、“visible minority”、“person of colour”、“non-White” といった時代遅れかつ不正確な表現を使用せずに "racialized person" または "racialized group" と表現する。

つまり、人種という概念は社会的要因によって構成されているとする社会構築主義的な立場から "racialized" という言葉を使っているということです。社会構築主義とは、人間が認知している現実は人間関係によって作られているとする考え方です。詳しくはWikipediaなどを参照していただきたいのですが、ここで言えるのは、オンタリオ人権委員会は「人種という概念は社会的に作られたものだ」と考え、人種化の対象とされている非白人を「人種化された人」と呼んでいるということです。

この "Racialized" という表現は、カナダでは政治家によっても積極的に使用されています。

たとえば、カナダの政党NDPは非白人として史上初めてカナダの主要な政党の党首に就任した同党党首のジャグミート・シンを "the first racialized person to lead a federal party" と紹介しています。

また、トルドー首相も、会見でトランプ大統領のBLM抗議活動への対応について意見を求められて21秒間沈黙したことで話題になりましたが、その沈黙の後で "Black Canadians and racialized Canadians face discremination as a lived reality every single day." と "racialized" という言葉を使っています*4(下に引用するツイート内の動画1:16頃から)。

この言葉を使うことに反対する人もいて、上で引用したツイートにも「Racialized Canadian って何だよ?」的なリプライがついていたりしますし、以下に引用する2014年に書かれたオピニオン記事ではちょっと乱暴にまとめると「西洋社会においては人種はもはや障害にはならないのだからいちいち racialized などという言葉を使うな」と書かれています。これを書いたのは白人ジャーナリストですが、BLM運動によって多くの人たちが法的・社会的な構造に組み込まれた体系的な人種差別について学びを深めた今となっては、批判の声が多数集まりそうな内容です。まぁ、カナダにもいろんな人がいるということで(多様性を謳う国ですしね)。

nationalpost.com

 

 

*1:これだけで面白そうだと思うでしょ!

*2:その時、日本がオランダと対戦する前の時点で、他に残っていたのはノルウェー、ドイツ、イングランド、フランス、アメリカ、スウェーデン、イタリアといういわゆる「欧米」のチームだけでした。フランスに黒人選手が多いことと植民地主義の関係については主要な話題として触れられています。

*3:現役の女子サッカーカナダ代表選手で、国際試合における最多得点記録の保持者(男女総合)、つまり各国代表の公式戦で、世界一点を取っている偉大なサッカー選手。

*4:黒人と racialized をあえて分けているんですね

最近頻繁に使われるようになった言葉「Social distancing」

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受けて、「Social distancing」という言葉がよく使われるようになりました。

 

Merriam-Webster dictionaryの定義では、「感染症の流行時に感染を防ぐことを目的として、公の場所で人や物から通常よりも大きく物理的距離を取ること、または直接触れるのを避けること」となっています。友人との会話やインターネット上でのやり取りなども、個人的に見ている限りは「物理的距離を取る」という意味で使用されている場合がほとんどです。距離を取る対象が人であれば「対人距離を取る」という言い方が適切かなと思います。

www.merriam-webster.com

 

Macmillan dictionaryのオープンディクショナリー(Wikipedia同様、ユーザーが投稿できる)には「病気が広がる速度を遅くするために家から仕事をする、学校を閉鎖する、大きなイベントをキャンセルするといった対策を講じること」という定義が投稿されています。これは今年3月に投稿された定義のようです。

www.macmillandictionary.com

 

Wikipediaでは、Social distancingとは「感染症の拡大を止める、または拡大速度をゆるめるための薬学的ではない感染予防対策」であり、「感染者と非感染者が接触する可能性を低めることを目的とする」として、その具体的な措置として学校の閉鎖、職場の閉鎖、大規模イベントのキャンセル、ジムやプールなどのレクリエーション施設の閉鎖、検疫、防疫線などが挙げられています。混雑する場所を自主的に避けることや、通勤せずにリモートワークに切り替えることなどもこれにあてはまります。この場合は「社会的距離の確保」、「社会的距離戦略」などと言えるのかなと思います。

en.wikipedia.org

 

今のところ、日常的な会話で使用されている場合には「対人距離を取る」という意味で使われることが多く(カナダの場合は、2メートル離れましょうと言われています)、政府機関が使用する時にはもう少し広い意味で使われることが、どちらかといえば多いのかなという印象です。ただ、誰が使っているにしても文脈によって意味が変わりますので、日本語に訳す時には意味に応じて訳語を変える必要があります。

 

カナダのトルドー首相はこのようなツイートをしています。画像によれば、「Social distancing」という言葉は「COVID-19の拡大を制限するために、密接に接触する人数を制限する、他の人と2メートル離れる、不要不急の外出は避ける」ことを意味している、ということです。

新型コロナウイルスの影響でマラソン大会が中止に

5月のバンクーバーラソンに向けて、部活に通って日々トレーニングしていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、マラソン大会が中止になってしまいました。

 

中止という発表があったのが先週の金曜日。翌日の土曜日は朝から30キロ走の予定だったので、通常通り集まって走ってきました。

30キロ走は2回目でしたが、今回のコースはアップダウンも多かった(全長1キロほどのゆるい登り坂もありました)ので、走り終えた頃にはもうバテバテでした。

その後、ストレッチをして、部活で配られたバナナやポテトチップスを食べてから家に帰ったのですが、夫の顔を見て安心したのか、疲れや大会がキャンセルになった悲しさがこみあげてきて、子供のように大きな声を出して泣いてしまいました。

 

「絶対マラソンを完走する」という強い意志を持って、年明けすぐから大会のために膨大な時間を費やし、食事や生活パターンをマラソンのために変えてきたので、突然その目標がなくなってしまったことによる喪失感がとても大きかったです。

 

その日の夜、部活のコーチに誘われてランニング仲間の飲み会に行きました。

ラソン大会がキャンセルになったことで、マラソン完走の目標は来年のバンクーバーラソンまでお預けかなと落ち込んでいたのですが「来年まで待たなくてもいい、他にも大会はたくさんあるから君の初マラソンを一緒に探そう」と言ってもらいました。

そのうち何らかの大会に出れる日が来るはずなので、そのためにトレーニングは続けていきます。

 

フルマラソンに向けて - 部活のトレーニング内容

フルマラソンに初めて挑戦するにあたって、1人でトレーニングするのは難しいかもしれないと考えて、トレーニンググループ(通称「部活」)に参加しています。今回はその部活で行っているトレーニングの内容とスケジュールについてです。

 

曜日によってトレーニングの内容と走る距離が決められています。週に3回はグループで走り、2回は1人で走ることになっていて、具体的な内容は下の表のとおりです。

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ラソンに向けてのトレーニン

ラソンのトレーニングで一番重要なのはLSD

日曜日の「LSD」というのはLong Slow Distanceの略で、「Long=長時間」、「Slow=ゆっくり」、「Distance=長距離」走るトレーニングです。走るペースは、レースで走るペースよりも、1Kmあたり2分ほど遅いペースを目標にするよう指導されています。また、長い距離を走れるように心拍数を抑える必要があるため、10分走る⇒1分歩くを繰り返しています。距離の欄に13~32Kmとありますが、これは週によって変わります。1月頭のトレーニング開始時は13Kmで、毎週または2週間ごとに少しずつ距離を伸ばすプログラムになっています。このLSDが部活の中でも最も重要なトレーニングであり、日曜日はできる限り参加するように言われています。

部活で走る大きなメリットの1つは走るペースやコースを自分で意識しなくて済むという点です。マラソンの完走目標タイム別に部員がグループ分けされていて、各グループに「ペースリーダー」が配置されています。ペースリーダーが適切なペースでその週走るべき距離に応じて決められたコースを走り、かつ走るタイミングや歩くタイミングを教えてくれるので部員は何も考えずについていくだけでOKです。1人でランニングをしていると一定のペースを維持して走るのが難しく、走りたい距離に合わせてどのコースを走ればよいか考えるのが面倒くさくなる時もあります。そこを全部ペースリーダーにお任せできるのは本当に楽です。

ちなみに完走目標タイム別のグループは6Km走のタイムトライアルを行って、そのペースに応じて決められました。一番速いグループは「3時間45分以内」で、私は一番遅い「4時間半」のグループにいます。が、過去のハーフマラソンのタイムから考えると4時間半は厳しいので、個人的には4時間45分以内を目標としています。

火曜日はテンポ走、座学もある

火曜日はテンポ走で6Km走ります。テンポ走はLSDと比べるとかなり速いペースです。具体的なペースの決め方については別途詳しく書きますが、このテンポ走もLSDと同じペースグループに分かれてグループ別に走っています。そのため、ペースはペースリーダーが管理してくれます。

そしてテンポ走の前に、毎回コーチやゲストスピーカーによる座学の時間があります。これまでに学んだことは、ランニングシューズの選び方、適切な栄養補給方法、速筋・遅筋と乳酸の関係、適切な目標の設定方法です。

どんなスポーツでもトレーニングを行う際にはきちんとした理論を学ぶ必要があると思いますが、マラソンを走りたいという人は特に理論に裏付けされたトレーニングを実施したいとか、マラソンに関する知識を得たいという頭でっかちというかオタク気質な人が多いような気がします*1(気のせいかもしれませんが)。自分は間違いなくそういうタイプなので、この座学の時間が一番楽しいです。

Drillの日は強化練習

水曜日のDrillは強化練習。心肺機能や速度を上げるためのきついトレーニングを行います。具体的には坂道トレーニングやファートレック走*2など。

今週は軽いウォームアップのあとで「階段を全速力で駆け上がり、一番上まで登ったら歩いて降りてくる」のを20分間ノンストップで繰り返すというトレーニングを行いました。言葉で説明するのは簡単ですが、これがもうめちゃめちゃキツくて......。トレーニング後、膝が笑っているのを久しぶりに感じました。コーチ曰く「坂道トレーニングは毎週過酷になっていくので覚悟するように」とのこと、マジで部活です。中高生の頃にまともに部活動に取り組んだ経験がないので新鮮な感覚です。

自主練は体調に合わせて

木曜と土曜は自主練で、ペースグループごとに決められたステディ走のペースを目安として8~10Km程度走ることになっています。自主練については完全に個人に任されていて、筋肉痛が酷いとか、痛いところがあるという場合には距離を短くしても休んでも問題ありません。怪我をしないことが重要なので、自分の体の声に耳を傾けるようにと指導されています。

バンクーバーは雨が多い土地なので、雨が降ってるから今日は辞めよう、とか、ジムで走る、とか言ってたらマラソンに向けたトレーニングはできません。そんなわけで、グループで走る日は雪でも雨でも(もちろん安全性を確認したうえで)走っていますが、自主練の日はトレッドミルで走ってもOKです。

また、土曜日はランニングではなく、別の運動を行ってもいいことになっています。今は冬なので友達とスキーやスノーボードスノーシューに行ってもいいし、サイクリングでもいいそうです。ただし、ヨガは心拍数が上がらないからマラソンのトレーニングにはならないので、ヨガをやるなら休みの日か、ある程度運動した後にしてくださいとのこと。

休みもトレーニングのうち

LSDの翌日である月曜日と、3日間連続で走った後の金曜日は休みです。この休みは疲れを取り、トレーニングで消費された体内のグリコーゲンを取り戻す目的があります。怪我をせず、健康にレース当日を迎えるためには休養も欠かせないものであり、この休みもトレーニングに欠かせないものです。「この曜日は休み」と決めておくことで休みを意識できるので、1人でレースに向けてトレーニングをする場合でも休みの曜日を決めておくと良いかもしれません。

なお部員の中には運動が大好きで休みたくないという人もいるようで「休みの日に上半身の筋トレならしてもいいのか?」などとコーチに質問していましたが、私は週5で走るのだけで大変なので休みの日がとてもありがたいです。

週5で走らなくても完走はできる

ラソン経験者から見たら、この部活はトレーニング量が多いと思う人もいるかもしれないし、足りないと思う人もいるかもしれません。完走を目指すだけなら週5回ではなく週3回とか4回でも十分だと思います。

また、フルマラソンは42.195Kmなのに、練習では1度もフルマラソンの距離を走る機会がありません。これは、実際のレース直前に42.195Km走ってしまうとレース当日までに完全にリカバリーできない可能性があるためだそうです。

フルマラソンに慣れている人であればレース前に42.195Km走っても問題ないかもしれませんが、この部活は初めてフルマラソンに挑戦する人でも完走できるよう設計されているプログラムのため、走る距離を抑えているのでしょう(おそらく)。

LSDでは1Kmあたりのペースが実際のレースペースよりも2分/Km遅いため、32Km走ると当日のレースで42.195Km走るのと同じくらいの時間を走り続けることになるらしいです。

事前に32Kmまでしか走っていない状態でレース本番にいきなりトレーニングよりも速いペースで42.195Km走れるんでしょうか。それは実際に走ってみないとわかりません。数々のマラソンウルトラマラソンを走ってきて、何人もトーレニングしてきたコーチが大丈夫だと言っているので、その言葉を信じています。部活のスケジュールを乗り切って、「自分は十分にトレーニングを積んだので大丈夫だ」という気持ちで、怪我なくレース当日を迎えて、楽しくレースを完走したいです。

 

 

*1:余談ですが翻訳者にはマラソンや登山が好きな人が多いです。

*2:これについても、別途書きます。

フルマラソンに挑戦します

今年は初めてフルマラソンに挑戦することにしました。

5月3日に開催されるバンクーバーラソンにエントリー済みです。

bmovanmarathon.ca

今までハーフマラソンは何度か走ったことがありますが、それ以上の距離は走ったことがありません。自己流でトレーニングしてもうまくいかないかもしれないと思い、グループに参加してトレーニングすることにしました。

Running Room という地元のランニング用品店が主催しているバンクーバーラソン向けのトレーニンググループに参加しています。週に5日走るスケジュールなので個人的に「部活」と呼んでいます。

これまでしばらく週に1回程度しか走っていなかったので、今は週5で走るメニューをこなすのにとにかく必死です。

初めてハーフマラソンに挑戦した時にも思いましたが、マラソンで重要なのは目標設定と自己管理だなと日々痛感しています。大会本番で完走することももちろん、それ以上に、トレーニングの過程で怪我などせずに無事本番を迎えられるようにしたいものです。部活のコーチ曰く「事故ではない怪我はすべて自己管理で予防できる」ということですので、日々体の声を聞きながら、走れなそうな日は無理せずにトレーニングしています。

無理せずに、と言いつつ、雪の日や気温がマイナス6度まで下がった日も走りに行きましたが(しんどかった)。

これまでランニングをした距離のトラッキングにはNikeのアプリを使っていましたが、部活の方でStravaというアプリ内にグループを作って部員のみなさんと友達になれるようになっているので、そちらも使い始めました。

今はトラッキングiPhoneNikeアプリで行って、走った後でAndroidのSyncMyTracksというアプリでNikeからStravaへデータをインポートしています。

www.strava.com

Stravaでは、一緒に走った人が自動でタグ付けされるようになっています。それで気付いたのですが、一緒に同じ距離を同じペースで走ったはずなのに毎回走行距離データが人によって違うんですよね。10Kmくらいの距離を走った時だと、まあ誤差の範囲内だと思える程度の差なのですが、この前19Km走った時は最大4Kmくらいの差がありました。トラッキングしているデバイスの個体差なんでしょうか。知りませんけど。

私はApple Watchも持っていますが、こちらも距離の計測がちょっとおかしいのでトラッキングには使っていません。iPhoneも長時間トラッキングしていると電池が持たなそうなので、ランニングする時だけ使うようにGarminを買ってみようかなと思っています。

www.garmin.com

 

部活では週に1度、座学(トレーニング理論などを学ぶ)もあり、ためになって面白い話が聞けるので、その辺もブログで共有していけたらいいなと思います。

 

 

 

 

弾丸一時帰国日記 その2

4日間だけ日本に帰国した。

 

渡航の目的は祖母の葬儀に出席するためだった。

 

享年92歳。前日の夜まで元気だったが、ある朝、目を覚まさなかったのだそうだ。夏に他界した祖父の後を、少し遅れて追うように旅立っていった。

 

葬儀の場ではなんとなく、祖母の思い出話をすることはなかった。集まったのは祖母の子供たち(私の親と叔父、伯母)と数人の孫たちのみ。ごく身内だけで見送った。

 

祖父母のケアを巡って、親たちの間では色々と苦労があったのではないかと思う。亡くなった後も色々な手続きや葬儀の手配などで大変なはずだ。その辺のことを全く知らない私が色々しゃべっても仕方ないだろうと思い、何も言わずに過ごした。

 

私の目から見た祖母はとても個性的な人だった。相手の気持ちを考えずに思ったことをぽんぽんと口に出す人だと思っていた。きついなぁと思うことも言われたが、やさしくしてもらったことの方が多い。

 

何人も孫がいる中で自分だけが特別にかわいがられていたわけではないと思う。でも私が一番近くに住んでいたから、会う機会も一番多かったのではないかと思う。

 

都内に祖父と2人で住んでいた祖母は、大学生になって一人暮らしを始めた私によく「ごはんを食べにおいで」と電話をくれた。ごはんを食べに行くと、私の顔を見るなり毎回祖父が「ビール飲むだろ」と言うので、まずは祖父と私で一緒に飲み始め、その間に祖母が食事を用意してくれていた。帰りがけには一緒にスーパーに行き食料品をたくさん買って持たせてくれた。

 

祖母と私の2人で、ランチを食べにガーデンプレイスや新宿のデパートのレストランにも行った。

 

就職してからは忙しくて会いに行く回数も減っていたけれど、「メロンがあるからおいで」と電話をもらったこともあった。携帯電話の契約を手伝ったり、パソコンでわからないことがある時に手伝いに行ったりもしていた。

 

「1回使ってみたんだけどやっぱり合わなくて」と真っ赤な口紅をくれたこともあった。私にも似合わなかった。 

 

祖母は甘いものが好きだった。菓子屋の娘として生まれたので、アイスクリームもかなり早くから食べていたと言っていた。年をとってもアイスクリーム好きは変わらず、祖母の家の冷凍庫にはいつもヨーロピアンシュガーコーンの箱が入っていた。

 

カナダに2回目の移住をする直前、免許を持っていなかった私が教習所に通い始めたと言ったら「入学祝いに」とお小遣いをくれた。34歳にもなってお小遣いをもらうなんて、と思ったけれどありがたく頂戴した。祖母からお小遣いをもらったのはそれが最後になった。

 

葬儀が一通り終わると、喪服を着てパンプスを履いていた体がいやに重たく感じた。着替えた後、みんなに軽く挨拶してさっさとホテルに戻り、友人に「今東京にいるんだけどご飯行かない?」と連絡した。

 

帰国の連絡もしていなかったので相手は驚いたと思う。

 

中目のサイゼリヤで祖母の思い出話を聞いてもらった。優しい友人は「自分も思い出しちゃった」と言ってちょっと涙を流していた。

 

突然呼び出したのに話を聞いてもらえてうれしかったし、救われた気がした。自分の心に悲しみを閉じ込めていては、うまく生きていけない気がする。